コラム
〜 色々なテーマを語ります 〜   第1回


「裏?入国審査」 2007/1/30

総合商社で鉄鋼の輸出をしていた時の逸話を二つお話しましょう。

一つは私の初めての仕事での出張です。ナイジェリアの首都ラゴス。何故日本の鉄鋼を輸出している若者がナイジェリアに行くかと言うと、当時は中国人とインド人がナイジェリアに鍋・釜・フォーク・ナイフなどの食器を日本からの鉄を使って作る工場を沢山建てて、信じられないほど儲けて居たんです。儲けた金はスイス、ロンドン、香港の口座にうまい事プールされる仕組みになっていたんです。
という事で鉄を沢山買ってくれるお客さんがナイジェリアには沢山いて、商社はこぞって販売に注力して支店を設け、駐在員を沢山抱えていました。

という背景で私はラゴスの鉄の担当者のLeave(生活環境が苛酷な為、年間数ヶ月を国外で過ごす)の間、代わりに現地で仕事をする事になった訳です。
成田を出発、ロンドン経由、ナイジェリア航空に乗り換え、ラゴス国際空港に着きました。入国審査です。
沢山のナイジェリア人が入国審査に列を作っています。兎に角飛行機は満席でした。列もなかなか前に進みません。入国審査も一箇所だけでなく、数箇所で審査を受ける様です。
「参ったな〜も〜」暑いし、何か現地の人は目が鋭くて怖い感じです。「これじゃ、入国審査、税関まで何時間掛かるか判らないわ!」とうんざりしていると、ナイジェリア人の痩せた、若者がつつつと私に向かって歩いて来て、「ドルをくれたら入国審査官のスタンプを全部貰って来てやる」と言って来ました。
勿論 知らん奴やし、うさん臭い話だし、如何にも「外国人からドルだけ奪って逃げるナイジェリア人に日本人ビジネスマンまたまた狙われる!」と翌日の新聞に出そうな状況でした。

ま、若さの勢いか第六感か、「幾らほしんんだよ」とその痩せて目だけ光っている若者に交渉を始めました。$100から始まり、こっちはHard currencyのドルを持っているので強く出て「$10じゃなきゃ嫌だ。」
結局何度かのやり取りの後に$20で落ち着きました。
落ち着いたのは良いのですが、入国審査ですから、パスポートを渡さないと入国OKのスタンプが押して貰えない訳です。この方がお金よりず〜〜とRiskyですよね。日本人のパスポートは高く売買される、という話も頭を横切ったものの、そのおにいちゃんを信用したのではないものの、パスポートを渡しました。
パスポートを渡した瞬間私は「密入国者」と同じ立場になったわけです。
今なら絶対そんな事はやらないですがね。
そのおにいちゃんの姿をず〜と目で追いかけて10分が過ぎました。長い10分の後にスタンプが押されたパスポートがおにいちゃんと共に帰って来ました。

税関を出て、現地の日本人の先輩駐在員が教えてくれました。
「あれは、非番の入国審査官だよ。皆 休みの日はあーやって稼いでんだ。
幾ら渡したって?$20。それは初めてにしては上出来だぜ!」


もう一つの逸話も面白いです。
自動車メーカーのミッションを連れてフランスの鉄鋼メーカーを訪問した時の話です。日本の自動車メーカー側は10名。先方の鉄鋼メーカーは経営幹部から販売、技術の全部長クラス以下、20数名。総勢30名を超える大会議です。
僭越ながら私が双方の通訳を仰せつかりました。
まずは両者、会社の概要の説明。日本側は欧州の新たな工場建設計画を説明。その後技術Discussionに入りました。初めての訪問でもあり、堅い雰囲気でお互い相手の出方を見ながらの交渉です。勿論討論の力関係はバイヤーである日本側にあります。
日本側から厳しい質問が飛び交います。

さて昼になり、ま、昼飯を、という事になりますね。
フランス側は一つ一つのテーブルに日本人とフランス人を上手くミックスしてテーブルを囲む様に配慮してくれた様です。
12:30頃から始まったランチは、まず食前酒から始まりFirst course, Second courseと進む内に、あっちでもこっちでも白ワイン赤ワインがどんどん開けられます。
日本側は旨い食事とワイン、シャンパンの怒涛の様な攻撃になすすべもなく、言われるままにワイングラスを傾けています。日本人で赤い顔をしていない人はもう居ません。

12:30からのランチは3時頃終了しました。
全員車に乗って、再度交渉のテーブルにつきました。
午後の討議再開です。
でももう日本側は全員が下を向いてこっくりこっくり。酒に強い何名かがギリギリの所で目を開けていますが、瞳は中空を捉えるだけで、討議は完全に
フランス側が主導権を握りました。

そして数ヶ月後、多くの欧州の鉄鋼メーカーからこのフランスのメーカーが将来の鉄鋼供給メーカーに選ばれたのは言うまでもありません!!

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