コラム
〜 色々なテーマを語ります 〜   第5回


「英語と日本語は同じ事を表現できるの?」(その2) 2007/2/18

堅い話を避けて少しロマンチックに進めましょう。
告白する時日本語では何て言います?
「好き」「好きだ」「大好き」「とても好きだ」から先は「愛してる」まで色々表現が出来ます。
では一番初めの「好きだ」を例に挙げましょう。

では単に「好きだ」と同じ英語の表現を言って下さい!と言われたら如何します?
或る日本語の表現と同じ事を表現する英語は在るんでしょうか?
単に「好きだ」を英語に訳して言って下さい、書いて下さいと言われたら答えは少なくても3通りはある、と答えざるを得ません。
 I love you.
 I love it.
 I love them.
同じ表現でlove→likeにすると、同じく追加で3通り、合計6通りの表現が出来ますね。
日本語の意味と同じ表現はこのどれかですと言わざるを得ません。
なんとなく、「えっ」と思うかも知れませんが英語と日本語の発想はこれだけ違うと指摘できます。でも学校ではその内どれかが同じ表現だと思います、という答えはXでしょうね。

日本語は色々な文脈の中で、意味がそれぞれ変化しながらも相手も話し手の意味を理解する言語です。一方英語は、誰が、誰を、を明確に規定しないとそもそも文にならないのです。誰が、が決まると 「I love」、「 He loves」と動詞の形を厳格に決めます。
日本語では多くの場合必要のない、誰が、は英語では極めて重要な役割を担っていますね。
英語の学習の難しさや楽しさはこんな所にあります。物の捕らえ方が違いますので、英語は「誰かが、どういう行動をした」という積極的な肯定的な或いは能動的な文章の形になり勝ちです。一方日本語は「誰が、どういう行動を起こした」という動的な感覚ではなく寧ろ、「こんなんです」とか「こんな状態ですねん」となります。
ですから、文の構造も、発想も違う、その上文化も違う。色々違うのでそれを学習する苦労もありだからこそ喜びが倍加するんだと思います。

川端康成の『雪国』の冒頭の文のサイデンステッカーの翻訳はご参考になると思います。『日本語が見えると英語も見える』荒木博之著 中公新書 1994年 p.48-49 を下記に抜粋します。誰が、の扱い方、日本語の特性などがお分かりになると思います。
非常に面白いですよ!

    「長いトンネルを抜けた」のは何か

    国境の長いトンネルと抜けると雪国であった。

    川端康成の名作『雪国』の有名な冒頭部分である。この部分のサイデンステッカー
    の英訳は次のようなものである。

    The train came out of the long tunnel into the snow country.

右のサイデンステッカー訳は直訳すれば「列車は長いトンネルを出て雪国に入った」ということになろう。(中略。)
サイデンステッカーの英訳と比較してすぐ気が付くことは、川端の原文は主語がないのにサイデンステッカー訳の方はThe trainが主語になっている。つまり川端の原文は主語なし文なのである。
すなわち川端の原文にあたってはトンネルを抜けた主体が明らかにされていない。
長いトンネルを抜けたのは主人公のようでもあるし、列車のようでもある。つまり主人公とも、列車ともいえる主客合一した何かがトンネルを抜けたのである。川端の原文が名文といわれる所以は実はこういった主客合一の世界、主客を超越した描き方が対象世界を表現してみせたからである。
もう一つサイデンステッカー訳に欠落しているのは「国境の長いトンネル」の「国境の」が無視されていることである。川端の原文にあっては「国境の」という句は文全体にリズムと針を与えている。その句のある事で文章はひきしまり、読者はその表現に安らぐ。「長いトンネルを抜けると雪国であった」だけではもうひとつもの足りぬ思いがつきまとう。

川端康成の代表作はこうして英訳され、ノーベル賞に繋がるわけですが、日本語で読まないノーベル賞選定委員の方々には、例えばこの最初の重要な一文の事がどうお解かりでしょうか。
このコラムの表題「英語と日本語は同じ事を表現できるの?」はこんな思いから書いたものです。

私はHPやインタビューの中で「ネイティブスピーカーが英語学習の一番良い方法であるのは必ずしも正しくない」と指摘しております。
上記の例をご覧になれば一目瞭然だと思います。
英語の学習はつまり日本語の学習です。両方の言葉が判らなければ、何故そういう組み立てになっているか、何故そういう表現を使うのか、根本が理解できません。
英語を流暢に聞こえるようにしゃべるのは、英語圏であれば5歳児でも出来ます。
ぺらぺらおしゃべりをするだけ、又は流暢そうでも実はがさつな言葉を使って、ご本人の日常の日本語とはかけ離れたた英語を話す方もいらっしゃいますね。
私と一緒に是非英語と日本語の両方を理解しながら正しい表現を、優雅な表現を身に着けませんか。SES(Sunny’s English Square)はそんな事を目指してます。

 
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